第一課


先生がブログをほったらかしている間に、いろいろ映画見たり、civ3という中毒性ゲームにうつつを抜かしていたり、いろいろしていたのです。その中から、珠玉の一品を紹介します。


映画「300」
*1



ペルシャ軍100万を迎え撃つは軍事国家スパルタの精鋭重装歩兵300。要衝テルモピレーで男たちの決死の防衛戦がはじまるといったお話です。
これは面白かったですね。一緒に借りてきた「墨攻」が小説版漫画版にはるかに見劣りするできだったのに比べると、この作品は立派です。
まず第一に素晴らしいのは、頭をあまり使わなくてもよいこと。ペルシャ戦争の経緯とかそんなものを軽くすっ飛ばして、悪のペルシャ帝国に立ちはだかる男の中の男が啖呵切って、勢いあまってペルシャの使者をぶっ殺して、後は切って切って切りまくるの水戸黄門8時40分から45分の乱闘シーンを延々と見せられるようなわかりやすさ。これは視聴者をいらいらさせないための重要なポイントだと思います。
第二に素晴らしいのは登場人物が少ないこと。両軍あわせて数百数千の人が現れますが、そのほとんどが登場5秒以内に死にます。主要登場人物は片手で数えるくらいで足りるので、ゴッドファーザーパート3を見て誰が誰だかわからなくなってしまった経験のある先生にとっては大変助かる設定でした。
第三に男気。超兄貴なスパルタ王レオニダス。一人でペルシャ軍数個師団を全滅させることのできそうな無双振りには張飛もびっくりです。そしてなぜかスパルタ軍全員盾と兜以外裸マント。水着だらけの水泳大会なんてレベルではありません。超筋肉。鎧=筋肉。また、全員裸マントなのにファランクスを組むところなんかがやけにリアルだったりします。


ちなみにペルシャ軍の描写があまりにひどいということでイラン政府からクレームが入ったとか入らないとかいう噂を聞きましたが、先生が見るに、ペルシャ帝国の描写はそんなにひどくないと思います。
例えばクセルクセス1世。見た目は筋肉質なピーターですが、さすが大帝国の王だけあって懐の深い人物です。
クセルクセス王の偉大さを端的に現す例として、この映画にはエフィアルデスという男が出てくるのですが、彼は生まれつきの奇形のせいでスパルタの掟に従い間引き*2されそうになります。しかしそれを哀れんだ母の愛で生きながらえた彼は、ギリシャ世界興亡の一戦に参加したいとスパルタ王レオニダスに願い出ます。体は弱くてもその眼光は死を覚悟したつわもののものです。しかしレオニダス王は従軍を拒否。スパルタ軍はキレイな男にしか入れない古代版ガタカのような企業体質を持った硬直した組織だったのです。絶望したエフィアルデスは今度は腹いせにペルシャ王クセルクセスに接近、スパルタ軍の背後を狙うことのできる間道の存在をタレこみます。謁見の間には自分と同じ奇形の者、異類異形の人々が王様に近辺にはべり、半裸の女が挑発してきます。生きてて良かった、エフィアルデスはそう思いました。そこで偉大なるクセルクセス王が一言
「余に忠誠を誓うならば、お前の望む者を与えてやろう」
どうですか、この王の偉大さは。ペルシャ帝国においては、王に忠誠を誓いさえすれば、田舎で村八分にされていた者も、わけありで故郷を追い出された者も、先天性異常のせいで虐げられていた者も、どんな者でも夢を与えられ、平等に扱われるのです。キレイな男たちしか入れない排他的体育会系馬鹿組織スパルタとは雲泥の差です。偉大なるペルシャ民族の寛容さを強調するこの映画がなぜイラン政府に怒られたのか先生は良くわかりません。


とにかくこの映画は筋肉万歳な人、あまり頭を使いたくない人、男塾な人、B級テイストが大好きな人にはお勧めです。どっかのレンタルビデオ屋で借りて、是非見てみてください。おしまい。

*1:このパッケージが、この映画のすべてを雄弁に物語っています。

*2:弱い子は赤ちゃんのうちに遺棄、強い子だけがスパルタ人になれるという掟。