第一課


帰ってきたウルトラマン第33話「怪獣使いと少年」を見ました。
ものすごい名作ですね。どんなお話かというと、書くと長くなるので下のリンクから好きな文献を読んどいてください。

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このお話は、人間の差別心や凶暴さを憎悪したウルトラマンが始めて仕事放棄しようとするお話です。
よそ者で差別され虐待され続ける少年、少年と宇宙人との絆、無慈悲で横暴な普通の人たち、銃声、宇宙人の死、緑色の血……、ウルトラマンこと郷秀樹は暴徒と化した市民たちに「てめえらの血は何色だ」と怒鳴りたかったことでしょう。
先生は緑色の血の描写に大変ショックを受けました。暴徒と化した群集が少年と金山老人(宇宙人の仮の姿)に襲い掛かった際、突然警官が発砲し、金山老人を射殺します。血を流して倒れる金山老人、赤かった血が緑に変色していく、目を見開いて金山老人を見つめる郷秀樹。とても秀逸な場面です。
赤かった血が緑に変色する描写は、金山老人が宇宙人であり異形の者である証なのですが、そもそもウルトラマンは宇宙人です。下手すると俺も銃を向けられる日が来るんじゃないか怪獣とやりあってるときに後ろからズドンは嫌ですよとか思っても不自然じゃないし、もしかしたら宇宙では緑っぽい血なんて全然珍しくなくて赤い血のほうが気味悪がられているとしたら……、そんなことを考えてみると、怪獣から逃げ惑う人々を前にして変身を拒否しようとする郷秀樹の姿が、呆然として変身できないではなくて、強い憎悪の感情をもって積極的に変身しないという姿に見えてきます。
最終的に郷は伊吹隊長の言葉を受けて奮起して走り出し変身、怪獣をやっつけて職務を全うするのですが、その走るときの表情がなんと苦悩に満ちていることか。地球人を憎悪しつつ職務を全うする郷秀樹と「同情なんてしないわ、売ってあげるだけよ、うちパン屋だもん」とさらりと言ってのけたパン屋のお姉さんの姿がとても対照的なんですね。「同情なんてしないわ、戦ってあげるだけよ、うちウルトラマンだもん」そういいきれないところが「帰ってきたウルトラマン」の特徴であり、そうやって悩み苦しむ姿がこの第33話を名作にしている一因じゃないかと思いました。

とにかく面白かったんですよ。SFという設定が単なる設定じゃなくて、差別と憎悪という作品のテーマと密接に結びついている、SFという設定が生きているという点においても秀逸な作品だと思います。